特定非営利活動法人

最近の研究

日本薬学会第133年会 2013年3月 神奈川

  薬局が有する医薬品使用量情報を活用した疾患流行時期の推定

河原匡秀,伊集院一成,根岸健一,林 譲,矢島毅彦

【目的】様々な季節性疾患の流行時期は一般に、同一地域では、毎年大きくは変動しないと考えられる。従って、薬剤師は、その地域における代表的な季節性疾患の流行時期、疾患の流行順序及びそれらのおおよその間隔を、経験的に認識している。本研究では、薬局が有する医薬品使用量データを用いて、季節性疾患の流行時期、順序及び相互の間隔を科学的に明らかにすることを目的とする。
【方法】東京都西東京市に位置する薬局、及び東京都新宿区に位置する薬局において代表的な流行性疾患に使用される医薬品の2009年6月1日から2012年5月31日における毎日の処方人数データを収集した。このデータから1週間周期がある人間社会のリズムを除去するため、1週間の幅の移動平均法を適用した。このスムージング後のデータが急激に増加し,閾値を上回る点を医薬品の処方増加期間(主処方期間)開始日とした。閾値は、FUMI(Function of Mutual Information)理論で算出した検出限界から算出した。
【結果および考察】主に感染症予防に使用される含嗽薬と発熱を伴う感染症に使用されるNSAIDsの主処方期間開始日を比べると、郊外にある西東京市の薬局ではNSAIDsが,含嗽薬に対して0〜14日遅行し、都心部である新宿区の薬局では0〜2日遅行した。この違いは、地域における1日の人口変動の大きさや人が集中する交通機関の利用者数に起因すると考えられる。事実、日中と夜間の人口変動と交通機関の利用者数は,都心部の方が,郊外に比べて大きかった。そのため,都心部では種々のステージの患者が混在し,本研究の結果が得られたと考えられる。今後は薬局の数と地域を拡大することで、人口変動の大小や交通機関利用者数と、上記のラグ(遅行)の関係を解明していきたいと考えている。


日本薬学会第133年会 2013年3月 神奈川

薬局薬剤師に対する医療機器データベースに関するアンケート調査について

齋藤充生,頭金正博,佐井君江,林 譲,久保田洋子,飯嶋久志,矢島毅彦,大室弘美,吉田ルシア幸子

【目的】医療機器は、医薬品と比べ、その種類や使用方法が多彩で製品の世代交代が早いため、我が国で承認・認証されている医療機器を網羅的に収載したデータベース(DB)がなく、海外での回収情報の確認や日本からの輸出に不便を生じている。本研究では、薬局薬剤師を対象に、我が国で販売されている医療機器を網羅的に確認できる医療機器DBの要件についてアンケート調査を実施した。
【方法】NPO法人Health Vigilance研究会、(社)千葉県薬剤師会、(社)千葉市薬剤師会協力を得て、薬局薬剤師に対するwebアンケートを実施した。アンケート項目は、海外DB及び添付文書や審査報告書等のPMDAよりすでに公開されているDBを参考に、回答者の属性、医療機器DBの掲載場所、医療機器DBの検索項目、医療機器DBの更新頻度、医療機器DBの掲載項目、既存DBの認知度についてについて設定し、ラジオボタンによる選択回答とした。
【結果】1152人から回答が得られた。医療機器DBの掲載箇所は、PMDAの情報提供ホームページとの回答が多かった。検索項目として販売名又は一般的名称、使用目的、効能又は効果が、DBに必要な項目としては販売名、一般的名称、使用目的、効能又は効果、添付文書、回収情報、不具合情報が多く、既存DBでは添付文書、回収情報の認知度が高かった。更新頻度は月一回程度との回答が多かった。
【考察】医療機器DBへの期待は高く、現在認知度の低い既存DBについてもリンクすることで、行政、企業に加え、医療関係者や患者・消費者にとっても、有用な物になると期待される。また、医療機器DBへの掲載を契機に、承認申請等の電子化やDBへの自動反映を進めることにより、医療機器審査業務の効率化が進むことも期待される。なお、本研究は厚生労働科学研究費で実施した。


ちば薬剤師フォーラム2012 2012年11月 千葉

タブレット端末等を用いた薬局における待ち時間対策と患者とのコミュニケーション向上の試みーKuthrill-遼の試用についてー

大橋綾子,早田佳奈,大関千恵,齋藤充生,石井竹夫,稲津教久,林 譲,矢島毅彦

【目的】薬局における薬剤師と患者の良好なコミュニケーションは、お互いの信頼関係の向上につながり、服薬指導等で有用である。調剤時の患者の待ち時間は、調剤が個別に行われる以上、避けがたい問題であり、薬局では、映像資料や音楽等で対応しているが、患者の興味と合致せず、不満のもととなっているのが現状である。患者の趣味に合わせて、自然や絵画等の幅広い分野の一般教養を題材としたシリアスゲームを作成し、薬局内で使用することは、薬局における待ち時間の苦情の軽減や、患者とのコミュニケーションツールとして有用と考えられ、ソフトウェアの作成と試用を行うこととした。
【方法】我々が薬学教育用に開発したPC版ソフト「Kuthrill-薬」をベースに、PC、タブレットPC、スマートフォンのいずれでも作動する、落ち物系パズルソフト「Kuthrill-遼」を作成した。収載する分野は、伝統工芸、花、果物、車、くすりなど、約30分野とした。収載する画像や音楽は、購入した著作権フリーの商品を使用する、またはIPA「教育用画像素材集サイト」、Wikipedia、多夢などのパブリックドメインより入手し、今後の配布に当たって著作権上の問題のないように作成した。車の画像は著作権者から許可を得て掲載している。スコアはゲーム終了時に表示される他、分野ごとに記録される。
【結果】スマートフォン、タブレットPCでの動作確認と開発グループにおける試用を経て、薬局においても各種端末での試用を行った。薬局店内での試用でも、動作には特に問題はなかった。試行者は、男性20名、女性11名であり、60~70歳代が多かった。試行した端末は殆どがタブレットPCで、実施分野は四季の食、四季の花、四季の果、温泉、伝統工芸、自動車、植物等であった。試行者のコメントとして、「携帯プレイヤーは字が小さい」、「タブレットPCに初めて触った」、「おもしろい」、「もりあがった」、「会話のきっかけ」、「なかなか難しい」、「画面がずれる」などの意見が寄せられた。
【考察】Kuthrill-遼を用いることにより、患者は待ち時間を楽しく過ごすことができ、かつ、さまざまな分野に関する教養も深まることが期待できる。また、患者がどの分野をプレイしたかについて、薬剤師と会話することにより、患者の興味が分かるなど、薬剤師と患者の間の良好なコミュニケーション構築の糸口となることが期待される。また、タブレットPCやスマートフォンの操作にあたっては、手を使うことから、リハビリテーション効果が、知識を思い出すことで、知的トレーニング効果も期待できる。また、今回は、薬剤師が試用者からの聞き取りにより、背景や試用のコメントを収集したが、今後、使用者ごとのコメントやスコアをソフト上で収集するよう、改良を行うほか、服薬指導につながる用語等への展開も検討している。今後、広く試用し収載分野や画像、画面配置等についてのアンケート調査により更なる改良を行う。使用するプラットフォームや画面サイズの意見を聞き、画面配置等の改良に反映していく予定である。将来的には、全国の薬局で広く使用できるよう、websiteで公開するほか、導入が容易なスマートフォンアプリ等としても無償公開を行う予定である。


第45回日本薬剤師会学術大会 2012年10月 静岡

確率論に基づく科学的医薬品在庫管理の試み

杉浦孝太郎,伊集院一成,海保房夫,花輪剛久,林 譲,矢島毅彦

【目的】薬局医薬品の在庫管理において、欠品は患者の健康や命に関わる問題であり、一方、過剰在庫は薬局の不利益につながる問題である。また、発注に関する業務量も薬局経営に影響を与える場合がある。これらの問題を経験的に解決することは難しいとされている。そこで本研究では、医薬品の在庫管理を確率論的に行う方法を模索し、実際に行われている方法とあわせてシミュレーションを行い、発注回数を抑えながらより精度の高い在庫管理を目指すことを目的とする。
【方法】各薬効分類から比較的使用量の多い医薬品12種類を選び、田無本町調剤薬局(東京都西東京市)において、2010年1月1日から2011年12月31日までの2年間の使用量を集計した。集計した医薬品使用量の時系列を1週間毎の相対的な使用量に変換し、使用量のバラツキを表す標準偏差σを分析化学におけるデータ解析に用いられるFUMI理論によって求めた。このσを利用し、最少必要在庫量と発注量を求め、定期発注方式(ある固定した間隔で発注を行う方式)によるシミュレーションを行った。一方で、実際の店舗で行われている発注点方式(ある発注点を下回ったらその都度発注を行う方式)によるシミュレーションも行い、両者を比較し評価した。このとき、定期発注方式ではσを、発注点方式では必要在庫量と発注点を変動させ、指標となる値への影響を調べた。評価の指標としては、発注の回数、欠品の回数、在庫回転期間(適正在庫の指標)の3点を用いた。
【結果】発注方式の違い、薬剤の季節性の有無によって、発注回数と在庫回転期間に特徴的な違いが現れた。得られたデータを検討した結果、3点の評価項目において、季節性のない薬剤には発注点方式を、季節性のある薬剤には定期発注方式を用いるのが効率的であるとの結論を得た。
【考察】どちらの発注方式にも利点と欠点があり、一概にどちらかが優れているということはできず、薬剤の季節性によって使い分けることが必要である。一般に季節性の有無は経験的に判断されるが、FUMI理論を用いることでより高い精度をもって判断することができ、なおかつ必要な最小在庫量まで推定することができる。本研究で用いた方法論は、薬局の業務量を軽減しつつ、常に適正な在庫量を確保するために有力なものであるといえよう。