インフルエンザ感染の地理的伝播パターンの求め方

東京都よりも栃木県の方が,インフルエンザの流行時期が遅いことを経験的に知っている薬剤は多いと思います。しかし,これは事実でしょうか?毎年そうなのでしょうか?インフルエンザはヒト‐ヒト感染ですから,東京都から埼玉県を経て栃木県まで伝播したと想像できますが,これはどうなのでしょうか?

へヴィ研は薬局データを使って,これらが事実であることを証明しました。
 インフルエンザ感染の地理的伝播パターンを探求するポイントは,次の2点です:
1. 異なった地点にある2つの薬局における流行時期のずれ(ラグと呼びます)を求める;
2. 異なった地点にある多くの薬局の流行時期を相対的に(ラグを用いて)または絶対的に(日時で)求める。
へヴィ研は多くの薬局間のラグを求め,東京近郊におけるインフルエンザ伝播の経路と速度を推定しました。要点を下に書きます。

下の図は,2004年11月1日から2004年7月29日までの薬局におけるタミフルカプセル販売量の日間変動です。薬局Aは東京都田無市の田無本町調剤薬局であり,薬局Bは神奈川県相模原市のかもめ薬局です。この時系列を見た限りでは,薬局間のラグを求めるのは簡単ではないことが想像できます。たとえば,最大の販売量の日を比べても,最大値は偶然ですから,意味がないでしょう。

へヴィ研は,相互相関関数を用いてこの2薬局間のラグを求め,最終的には,14薬局間のラグを求めました。その結果,鉄道路線に沿って,一日平均約3キロで,東京都心部から郊外にインフルエンザは伝播すると推定できました。下の図に,推定された経路を示します。